
2014年 02月 13日
グローバル企業こそ選択制にするべき
確定拠出年金の特徴のひとつである「ポータビリティ」はメリットでもあり、時にデメリットにもなります
例えば企業型に加入していた方が転職した場合、転職先に企業型があればご自身の確定拠出年金資産残高を「ポータル」して転職先の会社で継続し、資産形成が可能です
もし転職先に企業型がなければ、ご自身で確定拠出年金個人型に任意加入し、資産残高を「ポータル」し、同様に継続、資産形成が可能です
でも、第三号被保険者(会社員に扶養される配偶者)や公務員、あるいは海外居住者などになる場合は、資産残高は「ポータル」されるものの、資産形成を継続させることができず、その時の残高を運用するのみとなります
運用のみなので、選択する運用商品によっては手数料負けをしてしまうこともあるでしょうし、新しい積立ができないということは、所得控除のメリットを得られないので、確定拠出年金のよさが大幅に減少してしまいます
加入資格を喪失した方の脱退一時金取得のルールは、加入3年以下または残高50万円未満となっており、現実問題としてせっかくの老後資産の新規追加もできず、運用も積極的にしないままお金が眠っている方も多いようです
個人的には自身のキャリアパスにおいて、将来運用指図者にしかなりえないような方については、そもそも確定拠出年金に加入しないという選択肢があった方が望ましいと考えています
例えば、企業拠出をする場合、前払い退職金として「給与として受け取る」か、「確定拠出年金の掛金として受け取るか」を本人に選択させる
そうすれば、少なくとも加入資格を失う可能性の高い人が面倒を被ることがなくなります
給与としてうけとれば、現行給与と同様給与所得として扱われるので課税となりますが、それも本人が望めば特に問題はないでしょう
会社としても、前払い金であれば退職金引当金のような有税処理にもなりませんし、退職金支払いの将来債務も発生しません
また希望者には、より多くの拠出が可能になるよう、個人拠出を認める場合、自身の給与から積立額を決定させる「選択制」であれば、本人は所得控除のメリットを受けるだけでなく社会保険料削減のメリットも享受できます
もちろん同様に会社が負担する社会保険料も減額できます
何度か取り上げていますが、いわゆる「マッチング拠出」は、個人拠出の掛金額が企業拠出額を上回ってはいけないというしばりがあります
例えこの秋から企業型確定拠出年金の掛金限度額が55,000円に引き上げられたところで、企業拠出が2万円であれば、個人拠出は2万円どまり、のこり15,000円の所得控除枠はムダにしてしまうことになります
これが「選択制」を使えば、本人拠出額は企業拠出額を合わせて掛金限度額の範囲内で可能になるわけですから、個人の資産形成を後押しするのであればやはり「選択制」の方が分があるのです
またマッチング拠出の個人掛金は税制上「小規模企業共済の掛金等」というカテゴリになり、年末調整あるいは確定申告での税金調整です
従って、社会保険料の削減効果にはいたりません
一方で「選択制」は見た目受け取り給与額が掛金分減少しますので、特別な税務処理も必要ありませんし、社会保険料の削減にもつながります
社会保険料の削減といえば、社会保険給付の減少について、センシティブになる方もおられるかと思いますが
その場合はぜひ、いくらの掛金で、どんな給付がいくら減少されるのかHOW MUCH に注目してご判断下さい
どんなことをするにもトレードオフはあります
選択制による社会保険給付の減少は、トレードオフとしては限定的なデメリットではないかと考えています
もちろん転職後に確定拠出年金の加入資格を失うであろう人であったとしても、確定拠出年金に加入するメリットはあります
例えば、加入期間が10年以上あり60歳で受給権が発生し、それをメリットを考えられる方
ご本人の年齢やライフプランによっては、仮に60歳までのある一定時期運用指図者であったとしてもそれまでの期間の節税メリット等を考えれば加入が得と判断する人もいるでしょう
特に日本国籍以外の社員さんがいらっしゃる会社さん、優秀な人財がダイナミックに活躍するような会社さんであれば可能な限り選択肢を残す設計が良いのではないかと考えます
確定拠出年金導入の際には、今後の人事戦略としての制度設計ぜひご検討いただければと思います
企業拠出をするのであれば、前払い退職金として、掛金とするか給与所得とするかを選択させる
個人拠出を推奨するのであれば、マッチングではなく給与からの拠出する選択制に
グローバル企業の人事のひとつのソリューションとしてご提案します
Tags: グローバル企業 マッチング拠出 前払い退職金 確定拠出年金 選択制